観劇記録2020/02~03

だいぶ時間が経ってしまったが、過去の観劇履歴を徐々に上げていくつもり。

2020/2/14 「ゴシックは魔法乙女」(新宿村ライブ)
自分は未プレイのシューティングゲームが原作の2.5次元舞台というなかなか敷居が高い状態だったが、そこは手練のILLUMINUS制作。
原作を知っている人たちの褒めっぷりからすると相当キャラの再現度が高いらしく、特に原作でも同じチコ役の声優をやっている星守紗凪さんは気弱少女から闇堕ち暴走までの振り幅がさすが。
元々この作品のチケットを取るきっかけで目当てだった千歳ゆうさんの少年装、今回もみごと。特にダンスシーンでしっかり「男性アイドルの踊り方」になっているので、あれは女性ファンが増えたのでは。
ILLUMINUS作品は毎回アンサンブルのみなさんが凄いが、これも敵に生徒にと大活躍。体が利く人たちが揃ってるから、歌パートではダンサーとしても見事なもの。

2020/2/15ソワレ 「お笑い家族」(浅草九劇)
本職はお笑い芸人の初恋タローさんによる原案をシアターザロケッツの荒木太朗さんが脚本・演出。タローさんは主役のお笑い芸人役も務める。
20年間なかなか芽が出ずテレビでは体を張る芸風ばかり、仕事のない日はアルバイト、という暮らしなのだが、それでも奥さんが働いている描写はないし三人の娘を育てているのだから、芸人としてはまだマシな方ではあるのだろう。

2020/2/22マチネ、2/24 「re-call」(新宿村LIVE)
車にひかれそうになった娘を守ろうとして事故にあった男は、気がつくと十数年前の山形県の山中に飛んでいた。
そこで目にするのはかつての自分と両親、大学のサークルの面々。
そして知る、母の死の真相と彼が恨み嫌い抜いていた父の心情。主人公の叔父役・大神拓哉さんの悪い/駄目な男っぷりいいよねえ。
上下で別シーンを展開できるセットの構造も見事。
劇団ボクラ団義の旗揚げ公演の再演。

2020/2/23マチネ「カレイドスコープ 私を殺した人は無罪のまま」(新宿FACE)
若くして大企業の社長となった男の、娘の縊死。容疑者とされるが否認している青年との裁判は最高裁目前まで来ていた。
男の友人は関係者一同を集めて最高裁に向けての議論を始める。そして次々出てきては何度もひっくり返る「真相」。
劇団時間製作の谷碧仁脚本なので、がっつり重い。3時間にも4時間にも感じる110分。鉛の上着をじわじわと重ね着させられていくような時間。
「ボランティア」の描き方とかも実に谷さん。
全方位から見られる新宿FACEを前提とした芝居づくりなのでDVD発売がないのも納得。これは多視点VRにでもしないと撮りようがない。

2020/3/14マチネ 「歪」(キンケロ・シアター)
なんらかの理由で死んだ数組の人々。頻繁な問いの中で暴かれていく、それぞれの死に至る事情。
残念ながら、たぶんやりたいことに対して脚本・演出が追いついていない気がする。その分を演者の力量でカバーしている感じか。

2020/3/14ソワレ 「剣舞アリス『百花繚乱~Break a leg!~』」(新宿村LIVE)
「歪」の口直しに急遽当日券で。
女子高のダンス部ものと聞いていたのにいきなり濃厚な新選組のエピソードが始まってびっくり。頭の中に「?」が乱舞しているうちに女子高に切り替わり、その後も幾度も新選組の話とダンス部の話が切り替わりながら話が進んでいく。
その新選組パートが、殺陣も日舞もガールズ演劇とは思えぬクオリティで。
あるシーンからダンス部パートと新選組パートが繋がってからさらにブーストしていくのだが、ダンス+殺陣or日舞の両方をこなすことになる演者のみなさん、よくぞここまで。
ガールズ演劇を利用して新選組のあの辺りのエピソードをやりたかった、という作り手の嗜好や熱意が伝わってきて楽しい作品だった。

2020/3/28 マチネ 「よつば診療浪漫劇」(中野ザ・ポケット)
大正時代、とある診療所に初老のこそ泥が入る。酔いつぶれて寝ていたナースに見咎められたこそ泥は、咄嗟にその診療所の院長の父親だと嘘をつき。
その診療所にやってくる人々の、連鎖していく話と恋心の行き違い。
さすがのシアターザロケッツ流人情喜劇。

この時期には他にも何本も観劇を予定しチケットを取っていた作品があって日程調整が大変だったのだが、流行り病により相次いで上演中止・延期に。

舞台「純血の女王」

2019/12/21マチネ・ソワレ共 ILLUMINUS「純血の女王」(六行会ホール)
「赤の女王」「楽園の女王」と続く「女王ステ」三部作の三作目。
「赤の女王」は16世紀末のバートリ伯爵夫人、「楽園の女王」 は17世紀前半のバタヴィア号事件を下敷きにしていたが、今回は17世紀後半オーストリアで実際にあった魔女裁判「花の魔女」事件がベース。

百年に一度の「祝祭の日」を控えたオーストリアの古城リーガースブルクにいるのは女城主ガラリンと従者たち、そして厳しく育てられている双子の姉妹シエナとカタリーナ。
その城に旅の宿を求めて訪れるは、貴族エリザベートと従者アメリア。
城下町フェルトバッハのパン屋の新入りナターリエによる流言でカタリーナは魔女裁判に掛けられ、そこから全てが狂っていく。
この、拷問の責めに耐えかねて無実のカタリーナがついに「他の魔女」の名を挙げるシーンが圧巻。 (ここで「なぜその人の名を挙げたのか」はバーバラ役の錦織めぐみさんのブログで深い考察をしている )

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観劇記録2019/9

ネタバレ対策で千秋楽を待っていたりしたら個別に書ききれなくなったのでメモで。

2019/9/1ソワレ オザワミツグ演劇 「世界でひとり落ちてだけじゃないのかもよ」於:Geki地下Liberty
大地震の後、ラブホテルの廃墟に逃げ延びた人たち(と、何人かの幽霊)。全体に重いのだけど、東日本大震災を生き延びて引っ越した先でいじめられる過去話のパートが特にしんどい。

2019/9/15 朝劇銀座「おはよう事故物件」
ユニコーンとマリリン、ドアをへだてて繋がる二つの高級クラブの店舗を朝だけ借りて上演するホラー作品。まずはユニコーン側で。こちらだけだとどうにも話が消化不良。

2019/9/15マチネ 「レッドスネーク、カモン!!【青春版】」 於:築地本願寺ブディストホール
昭和の伝説の芸人、東京コミックショウのショパン猪狩とその妻・千恵子の結婚から晩年までを二時間で。肝心のあの芸はかなり再現度が高かったと思う。
三匹のスネークを擬人化して出したりと工夫してて楽しい。それにしてもあそこまで我慢する奥さんは今はそうそういないだろうねえ。
あと、劇中の立川談志の言い回しがかなり本人っぽかった。

2019/9/15ソワレ ILLUMINUS 「星の少年と月の姫」 於: 中目黒ウッディシアター
女子高の演劇部と、そこで演じられる舞台のメタ構造。演じられる作品がいかにも高校演劇部で書きそうな色んな作品への参照ありで、特に「銀河鉄道の夜」のお気に入りのシーンがほぼほぼ使われていたりしてニヤニヤ。
それにしても千歳ゆうさんの少年装がドストライクで眼福。

2019/9/16 マチネ 「笹塚マッドプール」 於:Geki地下Liberty
シェアハウスに同居する男たちと、訪れる人たちと。最初は一方的に色んな人の用事を押し付けられているように見えた主人公・清志がむしろ周りを自分に依存するようにコントロールしている関係が見えてきてからの後半の狂気。清志のガールフレンド・雛子の暴走っぷりも中々。
一部、学生寮住まいで自分も似た経験をしたなと思うシーンが。

2019/9/21 朝劇銀座「おはよう事故物件」
今回はマリリン側で観劇。やっと話がつながってスッキリ。
これだけ近い距離で推しの芝居を見られることは今後もそうそうないと思うし、普通に働いてたら一生この店内には入れないだろうな。一瞬だけのシーンのキャストが、それにはもったいない美人さんでした。

2019/9/21マチネ 「お茶っぴき」於:上野ストアハウス
千秋楽前なので後日追記。
それにしてもいい音させてたな、ビンタ。
以下2019/12/14追記。
舞台となるのは風俗店の控室。
楓とさくらのベテラン嬢たち、若い売れっ子・杏、若いがあまり客がつかない桃子。
そして店長とボーイ、行為中に倒れて運び込まれる常連客に、時折やってくる出前持ち。この全員がちゃんと息をしていて、それぞれのそれ以前やその後に思いを馳せてしまう。
岡元あつこさん、小松みゆきさんの女っぷりに「茂木ちゃん、これを学べよ」と余計なお世話な思いも。
正直、自分が選ぶなら(茂木忍推しだけど杏じゃなく)桃子かなー、彼女が不人気嬢とは思えない。

2019/9/23 「Get Back!!」於:俳優座劇場
始まったばかりなので後日追記。
中盤の宴会シーンの芸達者ぶりが楽しい。

舞台「楽園の女王」

イルミナス「楽園の女王」於:シアターモリエール、2019/6/1マチネ、6/2

17世紀に実在したバタヴィア号事件をモチーフにした、ダークファンタジーなガールズ演劇。 未見だが前作「赤の女王」が16世紀ヨーロッパとバートリ伯爵夫人をモチーフとしていて、いろいろとそこからの関連がある模様。

ガールズ演劇は最近正直ちょっと食傷気味だったが、これは贔屓の出演者が多いので楽しみにしていた。正直期待以上の出来。
殺人狂で悪魔崇拝者の王女アンとその従者グレンダの乗っ取り失敗により難破した船がたどり着いた孤島は、しかし製薬会社の秘密の施設がある島で……。
そのアンの序盤から躊躇ない殺しっぷりにこれが一番の悪党かと思いきや、終盤世間離れした上流貴族とその付き人のイザベラとエマが正体を表してからの圧倒的強さの表現。この切り替えの見事さは歌舞伎なら声が飛びそうなくらい。
そして真に一番「殺していた」のは、なんの戦闘能力も持たず、いきなり島に来た殺人狂やら吸血鬼やらに翻弄されていたはずの主人公メアリーだったという構造もお見事。仕事とはいえ薬の人体実験で大量の人命を奪いすでに心壊れていたメアリーは伝染病を意図的に媒介し、「百人殺して悪魔召喚」を狙うアンより多くの命をとっくに奪っていたのだった。 「おいたが過ぎた」アンが処刑されるシーンでも、実は舞台端でメアリーが笑っているという、気づいた人だけがゾクリとする仕掛け…。
「処刑」されたアンのその後など、いろいろ後日談の妄想が捗る作品でもありました。
終幕時点で結局人間として生き延びたのは製薬会社のフィオナひとりだけだったんだけど(他はヴァンパイアと悪魔と死神)、あの強運こそ最強なのかもしれない。

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