舞台「漂白剤」

山下菜美子プロデュース「漂白剤」 於:テアトルBONBON

浴槽に横たわる「先生」と暮らす女を、栗生みな、中野裕理、相笠萌、佐藤仁美の四人のキャストが演じる約40分間の一人芝居。
自分は5/16 20時(相笠萌)・5/18 13時(相笠萌)・5/18 17時(栗生みな)
の三回観劇。おなじ脚本、演出なのに相笠回と栗生回では「私」の醸し出す気配がガラリと変わる。
40分間、客席の咳どころか物音ひとつも許されないような緊迫感ある作品で、最初から最後まで静かにピンと張り詰めた、あんな客席は経験がない。
できれば全キャスト分見たかったが、見る側の精神的な負荷も相当高く二人分までで断念。
わかりやすく「先生」は浴槽の中でもう死んでいるのだが、個人的にはあえてこういう解釈をしている。

相笠萌は「吸って吐く」と「漂白剤」で役者の階段を一気に二段くらい登った印象。

観劇記録2019/4後半~2019/5前半

備忘録として。

2019/4/20 「SKE48版ハムレット」 (club eX)

TV番組「SKEBINGO!」の企画から立ち上がった、SKE48メンバーによるハムレット。これが舞台経験のあるメンバーの少なさから想定していたより、はるかに良かった。いろいろ経験の多い高柳明音はもちろんのこと、特に古畑奈和と野島樺乃は今すぐ外の作品に出していいレベル。棺に入ったオフィーリア(野島樺乃)のシーン、美しかったな。
丸尾丸一郎さん、「山犬」もそうだけどアイドルに芝居をつけるのがうまいのでは。

2019/4/27 劇団時間制作「吸って吐く」 (萬劇場)

久しぶりにヘビー級の作品(精神的な意味で)。
交通事故で幼女を死なせてしまい懲役から帰ってきた父親、代わりに飲食店を経営している母親、事故以来ずっと家にいる長男・哲人、親からかまってもらってない長女・春代。そこに出入りする結婚間近のカップルやボランティア団体のリーダー格、そして長女の家庭教師。家庭教師は父親が死なせた娘の父で復讐を考えており、父親だけがそれを知っている。
過去の悲劇に対する真相の告白はあってもいかにもな解決はなく、ただ最後かすかに希望は残る。春代役・相笠萌は強硬な拒絶から打ち解けていくような芝居がしっくりくる。
見終わった後の余韻の重いこと重いこと。

2019/5/3 「天狗 ON THE RADIO」(東京芸術劇場 シアターウエスト)

閉局間近の地方のコミュニティーFMを舞台にした作品。ラジオをテーマにした作品だけに、緒月遠麻さんはじめ何人かは放送シーンでちゃんと「ラジオの声」になっている。普通にこの番組聴きたいな、と思うくらい。
そしてモロ師岡さん、出てくると存在感で全部持っていくのがズルい。
最後、過去からの手紙でがっつり泣かせつつも、安易に「閉局するのやめた」にしないのがマル。
個人的な大ポカで、もともと開演時刻を取り違えていたところに電車の遅延が加わり、久しぶりに本気で走る羽目に。

2019/5/4 劇団時間制作「吸って吐く」 (萬劇場)

前回観劇後の胸のつかえが取れず、当日券で二度目。開始時点でそれぞれの人物の立ち位置を知っている分、よりそれぞれの心情が胸に刺さる。哲人の最初のセリフからちゃんと意味があることは二回目を見ないと気づけないかも。
実の親からネグレクトされていた春代と、実の娘を喪ってしまい加害者の娘を殺すために家庭教師になった男がある時期から擬似父子となっていくシーケンスの救いよ。
舞台美術が抜群に素晴らしい作品でもあったので、終演後にステージ前まで行って細かく細部を観察してしまった。

2019/5/11 「母母母と笑いなさい」 (中野MOMO)

母との関係をテーマにした4本の短編からなるオムニバス作品。
プロデュースした初恋タローさんがお笑いの人だけに、お笑い芸人を主人公にした4本目が一番力が入っているように感じた。
まだ上演中の作品に付き後で加筆。
以下加筆:
「何食べたい?」いじめから逃れるため不良グループと付き合うようになり次第に堕落していく少女とその母の物語。正直四作品中では一番こじんまりとしていたかな?
「寝たふり」バンドマンとは名ばかりのヒモのせいで風俗嬢からAV女優へと進んでいくがそこで意義とプライドを獲得する主人公と、その世界で人気が出たことに嫉妬しブチ切れるヒモと。終盤に出てくる母のキャラクター造形が強烈。
「アケビの花」かつて殺人を犯し今は別れて暮らしている母と、堕落しつつある主人公と。母親役が一本目の「何食べたい?」ではいじめっ子役だった森詩織だが、それにしばらく気づかなかったくらいのみごとな演じ分け。
「笑う母」この作品だけ主人公が男性。大阪から上京して漫才コンビを組んでいる主人公と、ザ・大阪のおばちゃんな母と。プロデュースしたタローさんがお笑い畑の人だけに、エピソードに説得力があった。