舞台「朝日に願え」

2020/1/5 朝劇銀座「朝日に願え」(studio marilyn)
脳死状態となったスナックのママの延命治療を続けるかどうかを巡る、ママの息子、チーママ、男女の常連客、計四人での会話劇。 ロングラン公演が決まったようなので、今のうちにネタバレにならない感想をあげておく。
谷碧仁さん脚本だけあって人物造形がリアルで、特に(「ビジネス」の村上もだったが)自分の考えを押し付けようとするタイプの浩司は絶妙にイラッとさせる。
延命治療に対して一番優柔不断な実の息子朔太郎役の田名瀬偉年さん、「吸って吐く」でのDVから二重人格になった哲人も「本当にそういう人」に見えたが、今作でも「そういう人」にしか見えない入り方。
実際の高級クラブの店内を朝だけ借りて行われる朝劇銀座には独特のリアリティがあるが、今回は特に店の設備であるカラオケの使い方が上手い。
真由役の栗生みなさん、昨年末の週末には朝にこれをやってからの「純血の女王」2公演をやっていたわけで、いくら演技とはいえ感情の振り幅……。

50分程度の小品とは思えない濃密な作品で、見終わった後ため息。
自分だったら、医療費が続く限りは結論を先延ばしにするんだろうなあ。

舞台「ビジネス」

2019/12/14 マチネ Pxxce Maker’ 「ビジネス」(ザムザ阿佐ヶ谷)
今年一二を争う、メンタルに刺さった作品。
大手アプリ会社の、そもそもの祖業だったが今は傍流の部署となり本社から隔離されてしまった手紙・便箋部門。その中でも上昇への野心を熱く語り周りの態度を批判し差別発言も繰り返す厄介な男・村上が主人公。彼が心酔する合理的で有能な先輩・五十嵐はしかし家庭では問題を抱えていて。
ある日その部署に、本社からの使者の女性社員・種田が部署解散の通知を持ってやってくる。部署の面々はなんとか撤回させようと起死回生の企画案を練るが…。

いや、とてつもない作品を見た。個人的に仕事で近い境遇になったばかりということもあり、こんなに見ていてしんどくなった観劇は久しぶり。会社の問題、性の問題(登場人物の一人はFtMであり、演者自身もそう)、演劇ならではの突き刺し方。作・演出の谷碧仁さんはまだ二十代だというのが恐ろしい。
正直、アフタートークで演者の素のモードが見られなかったらずっと引きずってしまったと思う。
面会で「こういうの好きでしょ」と言われたけど、そう、こういう心に爪を立ててかき回されるような作品に出会ってのたうち回るのが好きなんだ。

観劇記録2019/4後半~2019/5前半

備忘録として。

2019/4/20 「SKE48版ハムレット」 (club eX)

TV番組「SKEBINGO!」の企画から立ち上がった、SKE48メンバーによるハムレット。これが舞台経験のあるメンバーの少なさから想定していたより、はるかに良かった。いろいろ経験の多い高柳明音はもちろんのこと、特に古畑奈和と野島樺乃は今すぐ外の作品に出していいレベル。棺に入ったオフィーリア(野島樺乃)のシーン、美しかったな。
丸尾丸一郎さん、「山犬」もそうだけどアイドルに芝居をつけるのがうまいのでは。

2019/4/27 劇団時間制作「吸って吐く」 (萬劇場)

久しぶりにヘビー級の作品(精神的な意味で)。
交通事故で幼女を死なせてしまい懲役から帰ってきた父親、代わりに飲食店を経営している母親、事故以来ずっと家にいる長男・哲人、親からかまってもらってない長女・春代。そこに出入りする結婚間近のカップルやボランティア団体のリーダー格、そして長女の家庭教師。家庭教師は父親が死なせた娘の父で復讐を考えており、父親だけがそれを知っている。
過去の悲劇に対する真相の告白はあってもいかにもな解決はなく、ただ最後かすかに希望は残る。春代役・相笠萌は強硬な拒絶から打ち解けていくような芝居がしっくりくる。
見終わった後の余韻の重いこと重いこと。

2019/5/3 「天狗 ON THE RADIO」(東京芸術劇場 シアターウエスト)

閉局間近の地方のコミュニティーFMを舞台にした作品。ラジオをテーマにした作品だけに、緒月遠麻さんはじめ何人かは放送シーンでちゃんと「ラジオの声」になっている。普通にこの番組聴きたいな、と思うくらい。
そしてモロ師岡さん、出てくると存在感で全部持っていくのがズルい。
最後、過去からの手紙でがっつり泣かせつつも、安易に「閉局するのやめた」にしないのがマル。
個人的な大ポカで、もともと開演時刻を取り違えていたところに電車の遅延が加わり、久しぶりに本気で走る羽目に。

2019/5/4 劇団時間制作「吸って吐く」 (萬劇場)

前回観劇後の胸のつかえが取れず、当日券で二度目。開始時点でそれぞれの人物の立ち位置を知っている分、よりそれぞれの心情が胸に刺さる。哲人の最初のセリフからちゃんと意味があることは二回目を見ないと気づけないかも。
実の親からネグレクトされていた春代と、実の娘を喪ってしまい加害者の娘を殺すために家庭教師になった男がある時期から擬似父子となっていくシーケンスの救いよ。
舞台美術が抜群に素晴らしい作品でもあったので、終演後にステージ前まで行って細かく細部を観察してしまった。

2019/5/11 「母母母と笑いなさい」 (中野MOMO)

母との関係をテーマにした4本の短編からなるオムニバス作品。
プロデュースした初恋タローさんがお笑いの人だけに、お笑い芸人を主人公にした4本目が一番力が入っているように感じた。
まだ上演中の作品に付き後で加筆。
以下加筆:
「何食べたい?」いじめから逃れるため不良グループと付き合うようになり次第に堕落していく少女とその母の物語。正直四作品中では一番こじんまりとしていたかな?
「寝たふり」バンドマンとは名ばかりのヒモのせいで風俗嬢からAV女優へと進んでいくがそこで意義とプライドを獲得する主人公と、その世界で人気が出たことに嫉妬しブチ切れるヒモと。終盤に出てくる母のキャラクター造形が強烈。
「アケビの花」かつて殺人を犯し今は別れて暮らしている母と、堕落しつつある主人公と。母親役が一本目の「何食べたい?」ではいじめっ子役だった森詩織だが、それにしばらく気づかなかったくらいのみごとな演じ分け。
「笑う母」この作品だけ主人公が男性。大阪から上京して漫才コンビを組んでいる主人公と、ザ・大阪のおばちゃんな母と。プロデュースしたタローさんがお笑い畑の人だけに、エピソードに説得力があった。