舞台「魔術士オーフェンはぐれ旅」

「魔術士オーフェンはぐれ旅」於:新宿村LIVE!、2019/8/17マチネ

今年25周年を迎えるライトノベル、秋田禎信「魔術士オーフェン」シリーズ、原作1巻「魔術士オーフェンはぐれ旅 我が呼び声に応えよ獣 」の舞台化。
自分は旧富士見ファンタジア文庫のライトノベルはそれなりに読んでいるつもりだったが実はオーフェンはつまみ読み状態で(多分早めに人気が出た作品だから)、観劇前にやっと1巻をちゃんと読み、あとはオーフェンペディアで補完という有様。
で、その1巻で印象的だったシーンやセリフを本当に丹念にそのまま舞台のものとして息を吹き込んでいて。
プロジェクションマッピングと音響により魔術や魔獣を舞台上に現出させるのはもちろん、原作への理解と愛情がないとこうは出来ないだろうという細かい部分で「この人物ならこう」を再現しており、さらには原作中であまりにあっさり死んだのちに過去編で人気が出た人物を「ちゃんと殺してあげる」というファンへのプレゼントまで。
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舞台「誰かが彼女を知っている」

演劇ユニット100点un・チョイス!「誰かが彼女を知っている」於:赤坂RED/THEATER、2019/8/16ソワレ

一日夏休みが取れたので急遽チケットを確保。

長く同棲したカップルの片割れの女性が、ある日失踪する。男だけ残された部屋に次々と訪れる、彼女の同僚、きょうだい、隣人、刑事、さらに保険の営業に記者。はたして彼女の失踪の真相は。
基本的にシリアスな会話劇が二時間続くのだが、時々空気を壊す存在として若い刑事・江藤と隣の中年男・流川、上の階のキャバ嬢・玲奈が乱入してくる。特に江藤役・川隅美慎さん、空気を読まない鬱陶しさと使えなさをあそこまで演じられるのはお見事。流川役はイジリー岡田さんで、イベントの司会などは何度も生で見ているが、演技しているところを見たのは多分初めて。演劇ユニットを率いている人だけあってさすがに上手い。あと「弟」の演技の切り替えもお見事。
脚本の組み立てが緻密で、終盤も終盤になってから序盤の細かい伏線や兆しや嘘に気づく。途中までの自分の推理はかすってもいなかった。できれば二回見たかった作品。

それにしても後味の悪い終わり方。こういうの嫌いじゃない。

コント劇「今夜、あの橋の下で。」

SKE48×大人のカフェ「今夜、あの橋の下で。」於:原宿クエストホール、2019/7/27 ソワレ

過去何度か「大人のカフェ」の本公演は見ているが、アイドルグループとのコラボものを見るのはこれが初。
本公演でいつもゲストを上手に立てている様子から期待していたが、演技経験の浅いメンバーをうまく使って期待以上の出来に。
大人のカフェらしい、本筋の合間のインターミッションとしか思えないコントが最後に本筋につながってくるパズルのような構成は健在。特に寿退社OLのコントをそう繋げるか、というのはもうわかった瞬間につんのめるほどのインパクト。
大人のカフェ作品では鉄板でまず外さない飲食店ネタだが、今回の「消去法の店」もお見事。ああいうネタを思いつくのは普段の外食時によほど観察してるんだろうなあ。

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舞台「幻想のリチェルカーレ」

「幻想のリチェルカーレ」於:キーノートシアター、2019/7/26ソワレ、7/27マチネ

コメディを得意とする劇団カラスカの劇作家・江戸川崇さんが新たに立ち上げたフリスティエンターテインメントの第一回作品。
基本ノンストップコメディなカラスカ作品と違い、延々笑わせるのはもちろんなのだがかなり凝った話の流れと三人の主人公それぞれの闇とで、これは別団体の作品にしたのもわかる。
中世貴族→現代の学校→謎の競技「アモーレ」のオリンピック予選会→破滅目前の未来世界と、登場人物の名前は変わらないまま次々話が転換していき、未来世界からそれまでの各世界に干渉してスイッチバックしていく構成は、初見では「え、どういうこと?」となったお客さんも多かったのではないかと思う。この凝った時間ものor多元宇宙ものの構成と矢継ぎ早に繰り出されるギャグを両方受け止めるためには最低二回は必要で、「最低二回見て」という相笠萌の言葉を素直に聞いていて本当に良かった。
トリプル主演の三人、セイラ:石井陽菜、サラ:相笠萌、アリス:広沢麻衣の三人共に闇に落ちるだけの要素をうまく設定されている。個人的にはアリスの設定・人物造形が一番しっくり来た。
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舞台「ありすいんわんだーらんず」

ありすいんわんだーらんず」於:中野ザ・ポケ・ト、2019/7/20ソワレ

「不思議の国のアリス」をモチーフにした作品。
大金持ちの一人娘西園寺アリスが兎のような男を追いかけて穴に落ちるとそこにはお茶会をしている面々やらトランプの兵隊やら、といういかにも「アリス」な設定から、どっかんどっかん笑わせつつ独自の世界に進んでいき最後は泣かせてくる巧妙な構成。細かい伏線も多く、こういう作りだと知っていれば二回は見たかった作品だった。
元のアリスにはいない登場人物が何人かいるのだが、特に穴に入ってきてしまった私立探偵が完全に「探偵物語」の松田優作のパロディで、世代的には反応せざるを得ない。関西弁の兄妹の西成・天馬の天馬を演じる與儀ケイラ、さすがに関西弁のセリフとあって活き活き。
序盤のアリスの異常に長い自己紹介のひとり語りの、その最中「どさどさと」降ってくる桜の花びらだけで「この舞台ちょっと普通じゃないぞ」と伝わってくるのだが、クライマックスでは客席にもどさどさと花びらが降ってお客さんまで紙吹雪まみれに。マチソワの間の掃除は相当大変だったと思う。
舞台美術もアリスのモチーフをうまく活かしつつ「え、そこ可動なの?」と最後にわかる仕掛けもあり。トランプたちの魔法バトルのシーンなど照明の使い方も上手い。
それにしてもあの長台詞をだれずにやりきれる多田愛佳、ほんとに腕があるなあ。