舞台「チャイナ・ディフェクション」

女神座ATHENA「チャイナ・ディフェクション 天冥争覇」於:コフレリオ新宿シアター、2019/8/18マチネ

まだ皇帝がいた時代の中国。若い姉妹が営む食堂に記憶喪失の娘が助けを求めて転がり込み、それを追う組織がやってきて。
金曜日に面白いと評判を聞いて、土曜に入ってから急遽チケットを確保。
狭いコフレリオ新宿で、まるで全盛期香港カンフー映画のような作品をやってのけるというなかなか凄いことをやっている。
とにかく、ほぼ全員まともな殺陣をやったことがないであろう10人の若い女優で、カンフー映画の戦いのツボをきっちり押さえた殺陣を終始やってのけるのだから、いったいどんな教え方をしたらこんな事ができるのだろう、とそちらに興味が湧くほど。
序盤の食堂での戦いで、いかにもまっすぐに武術を学んでいるらしいマオの動き、そのおばあちゃんの丼や箸を使って武器をあしらう達人的な動き(このおばあちゃん役の田畑寧々さんの動きがほんとに素晴らしい)、襲いくる銀嶺会の使い手たちそれぞれの武器の個性を生かした動き。もうこれだけで「わかってるなー!」と感心。
その得物の選択も棒、斧、鎌、鉄の爪といかにもカンフー映画の悪役の武器で、それをさばいていく殺陣はいくら舞台用の小道具といえ練度が低くて顔にでも当たれば危ないもの。それをお互いしっかりと演じて魅せている。
筋立ても記憶喪失の少女の正体、二冊に別れた伝書に伝えられた技、その伝書を使った起死回生の一手、と見事な構成。
記憶喪失の少女・パイを演じた橋本耀、記憶が戻ってからの表情の一変っぷりがお見事。彼女の舞台デビュー作から見ているけどやはりセンスがいい。
戦いの多い作品中、トリックスター的立ち位置となるチュンライ役の横尾莉緒さん、性別不詳の怪しい役を好演。
また、スケールの大きな話を10人で回すため、通常ならアンサンブルを使うようなところまで2役、3役、4役と演じている演者が多く、やる方は相当大変だったと思う。

席間が狭く、ダレる作品だとすぐ隣の人の肩が当たっているのが気になってしまうコフレリオ新宿で、この作品では最後までまったくそれが気にならなかったのだから相当なもの。「そういう能力がある世界観ならあの人もあれで終わりじゃないよね?」と色々その後を妄想できるのも楽しい。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です