舞台「ありすいんわんだーらんず」

ありすいんわんだーらんず」於:中野ザ・ポケ・ト、2019/7/20ソワレ

「不思議の国のアリス」をモチーフにした作品。
大金持ちの一人娘西園寺アリスが兎のような男を追いかけて穴に落ちるとそこにはお茶会をしている面々やらトランプの兵隊やら、といういかにも「アリス」な設定から、どっかんどっかん笑わせつつ独自の世界に進んでいき最後は泣かせてくる巧妙な構成。細かい伏線も多く、こういう作りだと知っていれば二回は見たかった作品だった。
元のアリスにはいない登場人物が何人かいるのだが、特に穴に入ってきてしまった私立探偵が完全に「探偵物語」の松田優作のパロディで、世代的には反応せざるを得ない。関西弁の兄妹の西成・天馬の天馬を演じる與儀ケイラ、さすがに関西弁のセリフとあって活き活き。
序盤のアリスの異常に長い自己紹介のひとり語りの、その最中「どさどさと」降ってくる桜の花びらだけで「この舞台ちょっと普通じゃないぞ」と伝わってくるのだが、クライマックスでは客席にもどさどさと花びらが降ってお客さんまで紙吹雪まみれに。マチソワの間の掃除は相当大変だったと思う。
舞台美術もアリスのモチーフをうまく活かしつつ「え、そこ可動なの?」と最後にわかる仕掛けもあり。トランプたちの魔法バトルのシーンなど照明の使い方も上手い。
それにしてもあの長台詞をだれずにやりきれる多田愛佳、ほんとに腕があるなあ。

舞台「ヤンキャバウォーズ」

WITHYOU「ヤンキャバウォーズ」於:シアターモリエール、2019/7/20マチネ

原作漫画「ヤンキャバ・ウォーズ~六本木元ヤンキャバ嬢大戦争~」の舞台化。
高校卒業目前のヤンキー女子校生がキャバ嬢に喧嘩を売ってあっさり返り討ちにあい、見返すために同じ店で働くことに、という、「不良が何かで才能開花」もので、大枠は決まってしまうから演出と演者勝負。
その演出・脚本はシアターザロケッツの荒木太朗さん。彼自身の劇団でのホストクラブもの「シャンパンタワーが立てられない」(→過去記事)もとてもいい出来だったので期待。その期待を裏切らない出来だった。原作は現在kindle unlimitedで無料で読めるので通読したが、かなりのセリフと人物造形をそのまま活かしつつ(ドレスの選択なんかも似せてる)、いくつかの設定変更(きっかけとなったキャバ嬢を原作と違って同じ店に、オーナー店長のキャラ造形を変更、最初の嫌な客を終盤のキーマンに配置など)で二時間にうまくまとめているのがさすが。
そして演者。店のオーナー役・渡辺裕之さんの貫禄と洒落っ気、ナンバーワンキャバ嬢・ 麗奈役の副島美咲さんの別格感、IT企業社長役古賀司照さんの強烈な曲者感と表現の振り幅。
これを相手にしての美羽役・岡田彩花さん、序盤のヤンキーからいっぱしのキャバ嬢への成長を二時間の間に見せていてお見事。成長したなあ。
出演者の中に現役マジシャンがいることもあり、前説と作中にマジックが出てくるのも舞台ならではのアレンジで楽しい。

舞台「花街花魁クロニクル」

五反田タイガー「花街花魁クロニクル」於:草月ホール、2019/7/13マチネ

同劇団の2017年の作品の再演で、江戸時代・吉原の遊郭で生きる遊女たちの物語。
劇団内のキャストの多くは前回と役どころを変え、客演も前回出演した人に関してはやはり役をずらしている。また、初演の新宿村LIVE!より大きな草月ホールに合わせてか人数自体も増えて新たな要素も加わっていて、初演を見た人にとっても「こう変えたのか」「この配役もありだな」と楽しめる要素が多かった。
特にヒロイン的ポジションの小桜は、今回の演技の方が最後の決断に説得力を持たせていた。また、終盤重要な役である「赤鬼」も今回の方が迫力と悲しみを両立させていたように思う。
ただ要素が増えたぶん 、初演で好きだった若手遊女三人のシーンが減ったり、「影絵」のシーンがなくなったり、ちょっとちぐはくになったり (特に忍者はいまいち話にうまくはまってなかった気がする。演者ではなく脚本の関係で) は残念か。コメディシーンで活躍する「特殊能力持ち」が二人に増えていたのはびっくり。
あと、唯一前回と同じ役の飯塚理恵さん、さすがでした。ただのコメディリリーフかと思わせて、いつも要所で良い芝居するんですよね。

舞台「人魚姫」

ノックノックス「人魚姫」於:すみだパークスタジオ倉、2019/6/22マチネ

人魚姫ではあるがアンデルセンのあれとはほぼ関係がない、世界で最後の人魚姫を巡る物語。
ノックノックスは初見の劇団だが、劇団のツイートに本物の植物をセットに持ち込む様子があって、どんなセットになるかと見る前から楽しみにしていた。
入ってみると、目と鼻の先、段差なしに枯れ枝で区切られた先はもう砂が敷き詰められ緑の豊かなステージで、下手側には生演奏のスペース(写真は終演後の撮影可タイムに撮影したもの)。

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