シアターザロケッツ「雨のち晴れ」於:テアトルBONBON、2019/5/25マチネ
先週に引き続きテアトルBONBON。
2012年から実に五度の再演を数えるロケッツの代表作の一つ「雨のち晴れ」。中華料理屋を営む兄妹とそれを取り巻く人達の物語。
自分は2016年の三度目、2017年の四度目も見ているが、今回客席についてまず驚いたのが、これまでと舞台のかみしもが逆になっていたこと。今までは店の入口が下手、店の人が出てくるのが上手だったのが左右入れ替わっていた。
この作品、再演ごとに毎回キャストの大半は入れ替わるのだがその中で五回中四回に出演しているのが作中の憎まれ役である神田役の天野きょうじさん。その神田の演技のテイストも今までと明らかに違っているのに序盤で気づく(終演後の面会で天野さんに聞いたら、やはり「だいぶ変わりました」と)。
そして主人公・陽介と妹・春美の山場のシーン。ここの表現が今までとは歴然と違う。今までの春美は「兄思いの健気な妹」だったが、今回の春美の演技は、兄より心が強い、まるで「兄の母代わりの妹」のようだ。
ラスト、春美が店の戸を開けるシーンでセットの左右が逆になった効果に気づく。下手からの退出は「退場」の意味合いが出るが、上手からの退場は「自分の意志で」の意味合いが出てくるのだった。
同じ劇団での再演が突然このような化け方をすることがあるのか、と何度も驚いた二時間弱だった。今回の春美役を演じた北澤早紀という人物の芯の強さに作品が引き寄せられた面もあると思う。まあ上演中はそんな事を考える暇もなくタオルを濡らすボロ泣きだったわけだけど。
ひとつ印象的だったのは、自分が見た回では後半のいいところで地震があったのだが(推定震度2)、ステージ上も客席も、誰もそのことに気づかないように振る舞っていたこと。
あの瞬間、ここで中断されてたまるか、という気持ちで劇場の中は一つになっていたと思う。