12/18 劇団皇帝ケチャップ 「何も変わらない今日という日の始まりに」 (中野ザ・ポケット)
これもまた、自分の古傷に触ってくる作品だった。
登場人物は不老研究の施設にいる被験者たちと所長・所員、そして公的機関から来た調査員。
主人公の瑛美は高校生のときの親友の死をきっかけに自らを罰するかのように施設の被験者となったが、死んだ友人は彼女にだけ見える幽霊としてずっと現れ続け、もうひとりの親友とは何十年もずっと文通し続けている。
他の被験者もみな何かしら訳有り。何も変わらない日々を続けていたが、調査員の来訪を機に事態が動いてく。
特に、ずっと家族が迎えに来るのを待ち続ける(がその家族はとうに死んでいる)矢射子と所員の美舞がらみのエピソードが、演者の力もあってか印象深い。
瑛美役・今出舞はそこそこ長い一人芝居が、それもコミカルなモードとシリアスなモードと複数あって、その演技に改めて力量を感じさせられた。
しかしあそこまで何十年も同じ想いを抱え続けるというのは、被験者みな、肉体だけでなく精神も固定されたままなのだろうという推測が成り立つのだが、もしそうであれば内罰的な瑛美にとっては特に残酷な話。
被験者のうち薫だけは物忘れがひどくなっている描写があったので、老化も成長しないまま記憶が徐々に壊れていくのかもしれない。
所長の里見も数十年を経て特に老境に差し掛かった描写はなかったので、自らも実験体としていたのだろうか。